プロジェクト管理会計システムの運用定着に必要な責任者のスキル
プロジェクト管理会計システムの導入を成功させるためには、通常のERPとは異なる、独特の運用定着手法があります。販売管理・購買管理・工数管理・経費精算等、日々のERPで行う業務にはない業務が発生するからです。
プロジェクト予算を「プロジェクト責任者」が作成して、実績・予想を把握する等、導入して終わりではないシステムに対する運用定着の重要性、さらに運用定着を成功させるために必要な責任者のスキルについてご紹介いたします。
フロント型ERPがただの請求書発行マシーンになるケース
プロジェクト管理会計システムを導入して、
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経営者が求めていたものとは違う運用になった
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販売管理機能しか活用できない
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ただの「請求書発行マシーン」になっている 等
経理責任者が効率化を目指してしまったがために起こり得るケースは多く聞きます。
プロジェクト管理会計システムの目的を達成するためには、 経営者もしくは「プロジェクト管理会計」の重要性を理解している方が旗を振ることが重要 です。
建設業経理には長い歴史があるため、建設業経理の運用方法はしっかりと確立されています。しかし、システム開発やコンサルティング、web制作等の歴史はまだ浅いです。また、「プロジェクト管理会計」として会計寄りの書籍は何冊かありますが、令和となってもその運用方法まで記載したものは無いに等しいです。
それだけまだまだ確立していない分野なのです。
一方、IPO準備となりますと、厳密な「予算実績 + 着地予想管理」が求められます。上場会社各社は、見様見真似で行なっているケースが多いのが実情です。
上場を目指す場合には、 売上高10%、各段階利益30%を超えた時には業績予想修正が必要 です。
プロジェクト型ビジネスの場合、 役務提供型プロジェクト・ 受託型プロジェクト に大きく分けられます。売上計上基準に応じたプロジェクト管理がしっかりできていないと、正確な業績予想を算出することは不可能だと思います。
現代は、 知的労働者の原価の多くは人的原価が中心 です。
それだけ 工数の管理、目的意識の向上が重要 になります。
プロジェクト管理会計システムの運用定着に必要な責任者のスキル
プロジェクト管理会計の導入フローについて少しお話しします。
販売管理、購買管理、工数管理、経費精算等、一般的な機能の説明はマニュアルを見て理解できるでしょう。 しかし、一番重要なのは 「定着化に向けたプロジェクト管理会計における独特の運用定着の決め事」 だと思います。
独自のノウハウで得られた導入定着チェックポイントは100項目以上に渡ります。
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プロジェクトスーパーアドミニストレーターのキャラクター
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プロジェクトコードの付け方
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プロジェクト予算の立て方
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アサインされるメンバーのコストレート
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プロジェクトの締めのタイミング、仮締め・本締めルール
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プロジェクトの着地予想
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プロジェクトの新規・修正・閲覧・削除権限 等
「プロジェクト管理会計」独特の運用手法を確立するためには、 上記のポイントを整理できるスキルを持った旗振り役「運用定着プロジェクトマネージャー」が必要 です。
どの企業にも、ある程度の経理の知識を有する「現場感覚」のあるプロジェクトマネージャーはお一人は存在します。そういった方が適格でしょう。所謂「経理の専門家さん」に任せることだけは決してお勧めいたしません。
監修:古谷 幸治
公認会計士。大手監査法人、M&Aアドバイザリーファーム、外資系証券会社を経て独立。会計監査、買収合併の会計監査、IPO支援、内部監査支援を経験。証券会社では、上場・未上場企業双方の資金調達、合併買収の実行支援、財務モデルの構築からバリュエーションまで幅広く担当。キャピタルマーケットの経験を活かし、CFO経験も有する。
古谷公認会計士・税理士事務所