ローリングフォーキャストの必要性と課題

2024/06/11 収支管理 古谷 幸治
ローリングフォーキャストの必要性と課題

予算管理は、ほとんどの会社が単年度から予算を固定して運用されています。

年度の途中で予算を修正することや変動予算制度を導入している会社は少ないようです。そのため、経営環境が大きく変化した際には、対応できない場合が多いです。

IPOの審査でも「トップダウンで作られている予算」である場合、審査が通らないケースも少なくないようです。

そこで本稿では、 「ローリングフォーキャスト」 について解説します。

ローリングフォーキャストとは

ローリングフォーキャストとは、 最新の実績データから業績を予測して、当初の予算を固定化して運用することなく、経営環境(市場、顧客、競合先)の変化に対応して予測を見直すこと です。

つまり、実情にあった計画で予算の達成率を高める手法のことです。

ローリングフォーキャストが必要となる理由は、現代の経営環境の変化が激しく不確実で不透明だからです。常に最新のデータを活用して予測を見直していく必要があります。

大事なことは当初の予算を見直していくのではなく、あくまで 予測を見直して俊敏に戦術を変えていくこと です。

予算の固定化を防ぎ、予測によって戦術を柔軟に変えていくことが、当初の予算を達成するには重要なポイントです。

ローリングフォーキャストの課題

ローリングフォーキャストにはいくつか課題もあります。

  • 計画の責任所在が曖昧になる

従来の年度単位での予算・計画策定の場合は、1年先に対してコミットします。

見直しもないため、仮に上期のタイミングで目標を下回ってしまったとしても下期で挽回するチャンスがあります。そのため、コミットに対する責任の所存が不明確になるケースは少ないです。

ローリングフォーキャストの場合、四半期毎に予算や計画が見直されるため、当初の予算・計画に対する責任の所存が曖昧になるケースがあります。

特に下方修正が続いた場合、誰がいつ、何を根拠に見直したのか見えづらくなります。

投資家や株主からすれば、年初に立てた予算や計画を実現してもらう必要があります。 継続的に見直しが発生することで、当初の計画に対する結果や責任が見えづらくなるという点が課題 として挙げられます。

  • 担当者、担当部門の負荷増大

ローリングフォーキャストを取り入れると、 計画策定の頻度が増え、それに比例し実績・予算データの収集回数が増えます。コミュニケーション面でも現場担当者や担当部門間のやり取りが増え、工数も必要となります

これまで年単位で行っていたものを四半期単位で行うとすると、単純に4倍の負荷がかかることになります。もしExcelで予算や計画を管理していた場合、利用するファイルが4倍に増えるため、ファイル管理だけでも多くの労力が必要になります。

ローリングフォーキャストは良い面もあれば、その代償として上述したような「責任所在が曖昧になる」、「担当者の負担増大」という課題が発生する可能性があります。

予算の策定手法は複数のエクセルで管理することが多いですが、BIツールなどを連携させて一元管理化できることも重要なポイントです

古谷 幸治

監修:古谷 幸治

公認会計士。大手監査法人、M&Aアドバイザリーファーム、外資系証券会社を経て独立。会計監査、買収合併の会計監査、IPO支援、内部監査支援を経験。証券会社では、上場・未上場企業双方の資金調達、合併買収の実行支援、財務モデルの構築からバリュエーションまで幅広く担当。キャピタルマーケットの経験を活かし、CFO経験も有する。

古谷公認会計士・税理士事務所