導入に関する相談事例をご紹介 − ソフトウェア業を中心とした複合ビジネス展開をしているケース −
目次
先日プライム上場企業の子会社の経営管理責任者と情報交換の機会を持ちました。
以下のように、ソフトウェア業を中心とした様々な業務に携わっておられました。
- ソフトウェアライセンス販売・導入コンサルティング
- ソフトウェアライセンス保守
- ハードウェア販売&導入サポート
- 運用サポート
- 受託システム開発
- webデザイン受託制作
本稿では、子会社の上場に向けて、現場の意識改革と正確な会計処理の可視化を目指しているケーススタディについてご紹介いたします。
ソフトウェア事業の事業収支管理の運用方法
ソフトウェアライセンスについて以下のような業務をお持ちでした。
- 研究開発
- バグフィックス
- ソフトウェアのバージョンアップ
- バージョン管理からのソフトウェア減価償却
今回、プロジェクト管理会計に置き換えて、どのように工数管理・プロジェクト管理・事業管理をすれば良いか、という相談を受けました。オンラインでの打ち合わせでしたのでなかなか表現しにくかったのですが、まずはいくつかの事業に分けて管理していることを整理できました。
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ソフトウェアライセンス事業
- ソフトウェアの種類毎、バージョン毎にプロジェクトをたてて管理
- 作業工数(研究開発工数、バグフィックス工数、ソフトウェア管理の工数)を計上
- 販売について 各取引先ごとに納品検収基準で計上
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ハードウェア販売事業
- 販売について 各取引先毎にプロジェクトをたてて、納品検収基準で計上
- 仕入れ原価について 各取引先毎にプロジェクトをたてて、納品検収基準で計上
- 在庫がある場合は、別途在庫管理ソフトを導入
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保守運用サポート事業
- 販売について 各取引先の保守プロジェクト毎に役務提供基準で計上
- 原価について かかった工数を保守プロジェクト毎に計上
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受託システム開発事業
- 販売について 各取引先の受託プロジェクト毎に納品検収基準で計上
- 原価について かかった工数を開発プロジェクト毎に計上
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webデザイン受託事業
- 販売について 各取引先のwebデザインプロジェクト毎に納品検収基準で計上
- 原価について かかった工数をwebデザインプロジェクト毎に計上
ポイントは、「1. ソフトウェアライセンス事業」において、減価償却費用の計上をプロジェクト管理システムでどのように計上すべきかでした。
ソフトウェアの減価償却費用を各ソフトウェア毎に定額計上、もしくは販売見込みの基準で計上とした場合、ほとんど支出をしない複雑なプロジェクト原価の仕組みになってしまいます。そのため、会計ソフト側で個別に原価計算し、売上・原価を管理することとしました。
また、数万円以下の導入等もプロジェクトとして管理すべきかとの相談もありました。 こちらについては、10万円以下のプロジェクトについてはプロジェクトコードを付番しない、という運用工数も踏まえたルール化を追加しました。
IPOをゴールとした管理会計の仕組みを構築中とのことで、最終的には監査法人との調整が必要ではあります。
人による多少の手直しや工夫で済むものでもシステムを通そうとすると、かえって負荷がかかってしまう場合があります。杓子定規的に、全てをシステムで管理することはナンセンスだと考えます。
全てをシステム任せにするのではなく、以下に挙げるポイント等を意識しつつ、システムと人とのバランスをうまく保ちながら収支管理をしていくことが重要です。
- プロジェクト現場の予算実績管理に対する意識を高める
- ソフトウェアの厳格な売上と原価との収支を管理する
- プロジェクト管理会計における運用工数を極力減らす 等
今後もこのような相談事例がありましたら共有をしていきたいと思います。
監修:古谷 幸治
公認会計士。大手監査法人、M&Aアドバイザリーファーム、外資系証券会社を経て独立。会計監査、買収合併の会計監査、IPO支援、内部監査支援を経験。証券会社では、上場・未上場企業双方の資金調達、合併買収の実行支援、財務モデルの構築からバリュエーションまで幅広く担当。キャピタルマーケットの経験を活かし、CFO経験も有する。
古谷公認会計士・税理士事務所