アベイラブルとは?コンサル・SES業界での意味・原因・期間の過ごし方・稼働率の管理

公開日 更新日 収支管理 古谷 幸治
アベイラブルとは?コンサル・SES業界での意味・原因・期間の過ごし方・稼働率の管理

アベイラブル(available)とは、コンサルティングファームや SES(システムエンジニアリングサービス)などの人的稼働が中心の会社で、社員がどのプロジェクトにもアサインされておらず、次の案件を待っている状態のことです。 「アベる」「アベになる」とも言い、期間は通常 2〜3 週間から 1 か月程度です。

人的稼働中心の会社では、どこの会社もアベイラブル稼働について議論されていると思います。本稿では、アベイラブルの意味と使い方、コンサルタントがアベイラブルになる理由、期間の過ごし方、そして会社側で稼働率を管理して収支に結びつける方法を解説します。

アベイラブルとは

コンサルタントは基本的にプロジェクト単位で働きますが、プロジェクトの谷間でアサインされていない時期があり、この状況を**「アベイラブル」**と呼びます。

アベイラブルは、企業の立場から見ると**「入れるプロジェクトがないので次のプロジェクトに入れるまで待機させている状態」です。一方で、社員の立場から見ると「企業に所属しながら働かないで給料がもらえる状態」**となります。

アベイラブルは外資系コンサルティング業界で使われる言葉で、アベイラブルになった人は社内で「能力が低い人」「(人格などに)問題がある人」と思われる傾向があります。

アベイラブルと類似した表現には「アベになる」「アベる」があります。

意味と使い方

辞書的な意味は、「すぐに利用できる」「手が空いている」などです。「このプロジェクトに参加するまで 2 ヶ月ほどアベイラブルしていました。」というように用いられます。コンサルティングファームでは、プロジェクトに参画していない期間を「アベイラブル期間」と呼んでいます。

業界呼び方意味
コンサルティングアベイラブル、アベ、ビーチプロジェクトにアサインされていない期間
SES・受託開発待機、ベンチ常駐先・案件が決まっていない期間
広告・制作手空き、空き案件に入っていない期間

呼び方は違っても、会社の収支に与える影響は同じです。売上が立たない期間に人件費だけが発生するため、この時間が増えると案件の採算に関係なく全社の利益が減ります。

アベイラブル期間の目安

アベイラブル期間は通常 2〜3 週間であり、長くても 1 か月程度が一般的です。その理由は、プロジェクトが月初めに開始されることが多く、その前月にアサイン面談が行われることが多いためです。

多くの場合、精神的に疲弊した後のフォロー期間、つまり「リハビリ期間」として過ごされます。数か月にわたって続く場合は、次の章で挙げる理由のいずれかが当てはまっていることが多く、本人と会社の双方で対策を考える段階です。

コンサルタントがアベイラブルになる5つの理由

コンサルがアベイラブルになる5つの理由は以下の通りです。筆者の同僚からのヒアリング結果をベースに、多い順に並べました。

1. 社内でのコネづくりをさぼっていた

  • 前のプロジェクトで先輩マネージャーに気に入られたり、社内の偉い人と仲良くなっておかなかった場合です。スキルを重視する人にありがちです。

2. プロジェクトに人は不足しているが、自分の希望とマッチしていない

  • やりたいことが明確に決まっている場合です。1年以内に転職していく人が多いです。

3. プロジェクトに人は不足しているが、自分の人格がマッチしていない

  • 前のプロジェクトでの素行に問題がある場合です。とがってる人にありがちです。

4. プロジェクトに人は不足しているが、自分のスキルがマッチしていない

  • かなり稀です。入社するまでパソコンに触ったことがなかった人等です。

5. プロジェクトに人が足りている

  • 現実的にはほぼありえません。常に人不足です。コンサルはアベイラブルになったら社内トレーニングなどをしますが、他にもやらなければ後悔することがあるということになります。

アベイラブル(非稼働)期間の過ごし方

先日、元大手コンサルティング会社ヒューマンリソース部門出身で、現在は人材に関するコンサルティングをされている女性(Aさん)と情報交換をさせていただきました。

アベイラブルの間、いつでも次のプロジェクトに参加できるように社内向けの仕事や自己学習の時間に充てることができます。 このアベイラブル期間は、過ごし方次第で望むキャリアを大きく引き寄せるチャンスにもなります。

Aさんは次のように述べています。

「アベイラブル期間中、以下に挙げるように動けば、理想のキャリアや人生に近づくというのではないか。」

HR部門として、各コンサルタントが自身の能力や成果を向上させるために、どのように過ごせば良いのかを明確に示す必要があります。

実際にアベイラブル経験のある同僚に当時何をしていたのかを聞いてみました。以下のように、これまで掘り下げて体系的に学べていなかったことを学ぶ方が多いことが分かりました。

  1. プログラミングなど新しい技術の取得
  2. クラウドソーシングなどの副業を通じて、これまで関わってこなかった業界の考え方や知識の習得
  3. 語学の勉強
  4. プレゼンテーション資料のデザイン力向上
  5. 簿記・会計の知識の吸収

アベイラブル期間は、忙しいコンサルタントが自身の人生やキャリアを見つめなおす良い機会だと思います。 せっかくの機会を無駄にしないように、今回紹介した過ごし方を参考にしていただければ幸いです。

稼働率とアベイラブルが収支に与える影響

ここからは会社側の視点です。アベイラブルを管理する指標が「稼働率」です。

稼働率(%)= 案件に投入した時間 ÷ 稼働可能時間 × 100

コンサル・SES では 80〜90% が一つの目安とされますが、営業支援や社内プロジェクトにどれだけ時間を割く方針かで適正値は変わります。大切なのは目安との比較より、自社の稼働率を毎月同じ定義で測り、下がったときに原因が分かることです。

数値例:稼働率 10 ポイントの差

時間単価 5,000 円(法定福利費・賞与込み)のコンサルタント 10 名、月の稼働可能時間 160 時間、顧客への請求単価 12,000 円/時間の会社で比べます。

項目稼働率 90%稼働率 80%
稼働可能時間(10 名)1,600 時間1,600 時間
案件投入時間1,440 時間1,280 時間
売上(× 12,000 円)17,280,000 円15,360,000 円
人件費(1,600 時間 × 5,000 円)8,000,000 円8,000,000 円
粗利9,280,000 円7,360,000 円
粗利率53.7%47.9%

人件費は稼働率に関係なく同じ 800 万円かかるため、稼働率が 10 ポイント下がると粗利が 192 万円(約 21%)減ります。個々の案件が黒字でも、アベイラブルが増えれば会社全体の利益はここで削られます。案件ごとの採算の見方は「採算管理とは?成功に向けた基本とメリットの解説」で解説しています。

アベイラブル時間の行き先を決める

稼働率を正しく測るには、案件に紐づかない時間にも「行き先」が必要です。アベイラブル、営業支援、社内プロジェクト、研修、管理業務のように社内案件(プロジェクトコード)を立て、そこに時間を記録します。行き先がないと、担当者は適当な案件に時間を付けるか、記録自体をやめてしまい、案件の採算もアベイラブルの実態も分からなくなります。プロジェクトコードの設計は「最適なプロジェクトコードの付け方」を参照してください。

稼働管理の方法

稼働管理の実践にあたって、最も大切にしていただきたいのが、精度の高い工数入力です。

一般的に工数入力は、プロジェクト管理ツールにそれぞれのメンバーの工数を入力していきます。入力がルーズになってしまうと、プロジェクト全体どころか会社全体のコスト・利益管理にズレが生じてしまいます。

現実とデータとの間に乖離が生まれた状態でプロジェクト進行を行うことは非常に危険です。プロジェクトリーダーの方は、工数入力の正確性に関しても、以下を参考に細かくチェックするようにしましょう。

  • 定期的に入力されているか?
  • 工数の入力漏れがないか?
  • 勤怠時間とプロジェクトの時間が一致しているか?

日々の少しずつのズレが積み重なると、プロジェクト完了後に、目標を立てた予算に大きな差異が生じます。精度の高い稼働管理を徹底するようにしましょう。

アベイラブルを減らす運用:空き時期を先に見せる

アベイラブルは起きてから対処するより、起きる前に分かる仕組みのほうが効きます。ポイントは 3 つです。

  1. 案件ごとに残工数と終了見込みを月次で更新する。 各案件の「あと何時間で終わるか」が分かれば、誰がいつ空くかが 1〜2 か月前に見えます
  2. 要員の空き予定を営業と共有する。 空き時期が分かっていれば、営業はその時期に合わせて次の案件を確保できます。空いてから探し始めると、1 か月のアベイラブルはほぼ確定です
  3. 稼働率を人別・月別に並べて見る。 特定の人に集中しているなら理由 1〜4 のミスマッチ、全員が下がっているなら受注の問題です。原因が違えば打ち手も違います

この 3 つは、工数の記録と案件別の収支が同じ仕組みに入っていれば自動的に出せます。工数を Excel で集め、収支は別のシートで管理していると、空き予定を出すだけで半日かかります。工数と収支をつなげた進め方は「プロジェクト収支管理とは?進め方・計算例・Excelとの違いを実務で解説」、工数記録のルール作りは「タイムレポートのルール策定のコツ」で解説しています。

まとめ

  • アベイラブルとは、コンサル・SES でプロジェクトにアサインされていない待機状態。期間は通常 2〜3 週間から 1 か月
  • アベイラブルになる理由は社内のつながり不足、希望・人格・スキルのミスマッチが中心で、人が足りているケースはほぼない
  • 本人にとっては学び直しの機会。技術、副業、語学、資料作成、簿記・会計が定番
  • 会社にとっては売上のない人件費。稼働率が 10 ポイント下がると粗利は 2 割減る
  • 減らすには、工数の日次記録と案件別の残工数の月次更新で「誰がいつ空くか」を先に見せること

関連する用語(採算・原価・収益認識・工数)の定義は「プロジェクト会計 用語集」にまとめています。

よくある質問

Q. アベイラブルとは、簡単に言うと何ですか?
コンサルティングファームや SES で、社員がどのプロジェクトにもアサインされておらず、次の案件を待っている状態のことです。英語の available(手が空いている)から来ています。「アベる」「アベになる」とも言います。
Q. アベイラブル期間はどのくらい続きますか?
通常 2〜3 週間、長くても 1 か月程度が一般的です。プロジェクトは月初に始まることが多く、前月にアサイン面談が行われるためです。数か月続く場合は、スキルや希望と案件のミスマッチが疑われ、本人も会社も対策を考える段階です。
Q. アベイラブル中の給料はどうなりますか?
正社員であれば給与は通常どおり支払われます。会社から見ると、売上のない期間の人件費がそのまま費用になるため、アベイラブルが増えると全社の利益を直接押し下げます。SES では「待機」と呼ばれ、同じ構造です。
Q. 稼働率とは何ですか?どのくらいが目安ですか?
稼働可能時間のうち、案件に投入して売上につながった時間の割合です。コンサル・SES では 80〜90% が一つの目安ですが、営業支援や社内業務の割合によって適正値は変わります。稼働率が 10 ポイント下がると、人件費が同じままで売上が 10% 以上減る計算になります。
Q. 会社としてアベイラブルを減らすにはどうすればよいですか?
案件の終了時期と要員の空き時期を先に見えるようにすることです。工数を案件ごとに日次で記録し、各案件の残工数と終了見込みを月次で更新すれば、誰がいつ空くかが 1〜2 か月前に分かります。営業側はその情報をもとに次の案件を確保します。
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古谷 幸治

監修:古谷 幸治

上場企業CFO。不動産デベロッパー・建設業・CM映像制作業を経て、2002年にITパッケージシステム会社「エンプレックス」に参画し取締役CFOに就任。2016年、大手芸能プロダクションの経営企画を経て株式会社プロジェクト・イノベーションを設立。不動産建設業の会計知識を土台に、映像制作・ソフトウェア開発/SI・ITサービス業での経営管理経験から「プロジェクト管理会計」の手法を体系化。コンサルティング先は200社超。