他勘定振替高とは?仕訳・損益計算書での表示・ソフトウェア開発会社での使い方をわかりやすく解説

公開日 更新日 収支管理 古谷 幸治
他勘定振替高とは?仕訳・損益計算書での表示・ソフトウェア開発会社での使い方をわかりやすく解説

他勘定振替高(たかんじょうふりかえだか)とは、仕入や製造原価として計上した金額のうち、販売以外の目的(見本品・自家消費・固定資産化など)に使った分を、売上原価から控除して別の勘定へ振り替えるための科目です。 損益計算書では売上原価の内訳に控除項目として表示します。

主に製造業や小売業で使われる科目ですが、システム開発会社が販売目的のソフトウェアを自社で制作する場合にも、開発にかかった原価を資産へ振り替える際に使います。本稿では、他勘定振替高の意味、よくある 3 つのケースと仕訳、損益計算書での表示、ソフトウェア開発会社での具体的な運用方法、消費税の扱い、内部売上との違いを、プロジェクト管理会計の実務の視点で解説します。

他勘定振替高とは

他勘定振替とは、製造原価の項目をほかの勘定項目に振替することです。

主に製造業で行う振替処理ですが、システム系の会社の場合、パッケージソフトウェアの制作会社で多く活用されています。販売目的のパッケージソフトウェアの製造原価は、労務費・外注費のほか減価償却費、交通費など、開発にかかわる費用です。

「他勘定」とは何を指すか

「他勘定」は、仕入高や製造原価「以外の勘定」という意味です。仕入れた商品や作った製品は、本来は販売されて売上原価になります。しかし一部は、見本品として配ったり、社内で使ったり、自社の資産にしたりと、販売以外の使い道になることがあります。その分を売上原価に残したままにすると、売上と対応しない費用が売上原価に混ざり、売上総利益(粗利)が実態より小さく見えます。

そこで、販売以外に使った分を「他勘定振替高」として売上原価から控除し、使い道に応じた勘定(広告宣伝費、消耗品費、固定資産など)へ振り替えます。

なぜ仕入高を直接減らさないのか

仕入高から直接減額すれば同じ結果になりそうですが、そうしないのには理由があります。仕入高は「実際にいくら仕入れたか」を示す数字で、取引先との照合や仕入税額控除の根拠になります。これを事後的に減らすと、実際の仕入額が分からなくなります。他勘定振替高を別行で立てることで、「仕入はいくらで、そのうち販売以外に使ったのはいくらか」が損益計算書の上で読み取れるようになります。

他勘定振替高を使う 3 つのケース

ケース例振替先の勘定科目
見本品・サンプルとして使った商品を展示会で配布、試供品として顧客に提供広告宣伝費、販売促進費
社内で消費した商品を社員の福利厚生に使用、備品として使用福利厚生費、消耗品費
自社で使う資産や販売用の資産にした製造した製品を自社設備に組み込む、開発したソフトウェアを製品として完成させる固定資産(機械装置、ソフトウェアなど)

このほか、災害や盗難で失った分を雑損失へ振り替える場合にも使います。共通しているのは「販売以外の使い道が明確に分かっている」ことです。使い道が分からない減少は、棚卸減耗損として処理します。

他勘定振替高の仕訳例

上の 3 ケースを、金額を入れて仕訳にすると次のようになります。他勘定振替高は貸方に立ち、借方は振替先の勘定です。

ケース借方貸方
商品 10 万円を見本品として配布した広告宣伝費 100,000他勘定振替高 100,000
商品 3 万円を社内の備品として使った消耗品費 30,000他勘定振替高 30,000
製造原価 100 万円分のソフトウェアが完成し製品として資産計上したソフトウェア 1,000,000他勘定振替高 1,000,000

期中は仕入高(製造原価)に計上したままにしておき、決算整理仕訳としてまとめて振り替える方法と、使った時点で都度振り替える方法があります。どちらでも期末の損益は同じです。月次で売上総利益を正しく見たい会社は、都度または月次で振り替えるほうが実務上は扱いやすくなります。

損益計算書での表示

他勘定振替高は、損益計算書の売上原価の内訳に、仕入高(製造業では当期製品製造原価)から差し引く形で表示します。小売業の例で示します。

売上原価の内訳金額(千円)
期首商品棚卸高500
当期商品仕入高4,000
合計4,500
他勘定振替高▲100
期末商品棚卸高▲600
売上原価3,800

「他勘定振替高 ▲100」がなければ売上原価は 3,900 になり、見本品として配った 100 が売上原価に混ざります。控除することで、販売した分に対応する原価だけが売上原価に残ります。

製造業やソフトウェア開発会社では「当期商品仕入高」の代わりに「当期製品製造原価」が入り、その下に他勘定振替高を控除項目として置きます。次の章の図がその形です。なお、製造原価報告書を作成している会社では、当期総製造費用から他勘定振替高を控除して当期製品製造原価を算出し、損益計算書には控除後の金額だけを載せる表示も行われます。

具体的な他勘定振替高の運用方法について

製造原価全体から、販売目的のパッケージソフトウェアが完成した分を資産へ振替する際、製造原価の控除科目として「他勘定振替処理」を行います。

他勘定振替高の基礎知識と運用方法(図1)

他勘定振替高という勘定科目は、上記の場合は売上原価の控除科目になります。また、他勘定振替高は製品製造原価を正しい金額で表示するために使われる勘定科目です。

図の例では、当期製品製造原価 5,700 千円のうち、完成した販売目的ソフトウェアの制作原価 1,000 千円を「(借方)ソフトウェア/(貸方)他勘定振替高」で資産に振り替えています。振替後の当期製品製造原価計は 4,700 千円となり、売上総利益 900 千円が算出されます。振替をしないと、まだ販売していないソフトウェアの制作費が売上原価に含まれ、売上総利益が 1,000 千円小さく見えます。

ソフトウェア開発会社で振替額を出すための前提

ソフトウェア開発会社が他勘定振替高を正しく計上するには、「どの案件(開発プロジェクト)に、いくらの原価がかかったか」が月次で分かっていることが前提です。振替額は次の積み上げで決まります。

  • 労務費: 開発に投入した時間 × 時間単価
  • 外注費: 開発を委託した協力会社への支払(発生ベース)
  • 経費: 開発に直接紐づく交通費、ライセンス費、サーバー費用
  • 減価償却費: 開発に使用した設備の償却費のうち、案件に配賦した分

このうち労務費は請求書が来ないため、工数を案件ごとに記録していないと金額が出せません。期末になって「今期のソフトウェア開発にいくらかかったか」を遡って集計するのは困難で、振替額が過小になりがちです。案件別の原価集計の進め方は「プロジェクト収支管理とは?進め方・計算例・Excelとの違いを実務で解説」で解説しています。

研究開発費との線引き

開発にかかった原価をすべて資産に振り替えられるわけではありません。市場販売目的のソフトウェアでは、製品マスター(最初に製品化された製品)の完成までにかかった費用は研究開発費として発生時に費用処理し、資産計上できるのは製品マスター完成後の制作費(著しい改良を除く)です。自社利用のソフトウェアでは、将来の収益獲得または費用削減が確実と認められる場合に、その制作費を資産計上します。この線引きと運用ルールは「ソフトウェアの研究開発費の管理・運用方法」で解説しています。

他勘定振替は、パッケージソフトウェアの開発会社はおさえておくべきポイントです。自社販売の開発プロジェクトに関わる方は、しっかりと理解しておきましょう。

消費税の扱い

他勘定振替の仕訳そのものは、社内での科目の付け替えであり、課税取引ではありません。仕入時に計上した仕入税額控除は、見本品や社内消費に回しても原則として影響を受けません。

ただし、個人事業者の自家消費や、役員への贈与など、みなし譲渡として課税対象になる場面があります。振替先が社外への無償提供にあたる場合は、税務上の扱いを顧問税理士に確認してください。

内部売上・社内取引との違い

他勘定振替高と混同されやすいものに、部門間の取引を売上・原価として計上する「内部売上」「内部原価」があります。

項目他勘定振替高内部売上・内部原価
何をするか原価の一部を別の勘定へ付け替える部門間の取引を売上と原価として両建てで計上する
損益への影響売上原価が減り、振替先の費用または資産が増える全社では相殺され、部門別の損益に影響する
目的販売分に対応する売上原価を正しく示す部門別の採算を見る(管理会計)
決算での扱いそのまま損益計算書に表示連結・全社では消去する

部門別の採算を見るために内部売上を使う方法は「プロジェクト型ビジネスにおける「内部売上」「内部原価」の扱い方」で解説しています。

まとめ

  • 他勘定振替高は、仕入や製造原価のうち販売以外に使った分を売上原価から控除して別勘定へ振り替える科目
  • 見本品(広告宣伝費)、社内消費(消耗品費など)、資産化(固定資産・ソフトウェア)の 3 ケースが典型
  • 仕訳は「(借方)振替先の勘定/(貸方)他勘定振替高」。損益計算書では売上原価の内訳に控除項目として表示
  • ソフトウェア開発会社では、完成した販売目的ソフトウェアの制作原価を資産へ振り替える際に使う。案件別に原価を月次で集計していることが前提
  • 研究段階の費用は資産にできない。振替そのものは消費税の課税取引ではない

本記事は上場企業 CFO の監修のもと作成していますが、会計処理と税務上の取扱いは会社の状況によって異なります。実際の処理にあたっては、監査人・顧問税理士にご確認ください。

関連する用語(採算・原価・収益認識・工数)の定義は「プロジェクト会計 用語集」にまとめています。

よくある質問

Q. 他勘定振替高はマイナス(控除)で表示するのですか?
はい。損益計算書の売上原価の内訳で、当期商品仕入高(製造業では当期製品製造原価)から差し引く控除項目として表示します。仕入や製造原価の実額を減らさずに「販売以外に使った分」を別行で示すことで、本来の売上原価が読み取れるようにするのが目的です。
Q. 製造業や小売業以外でも使いますか?
使います。システム開発会社が販売目的のソフトウェアを自社で制作する場合、開発にかかった労務費・外注費などの製造原価のうち完成した分をソフトウェア(資産)へ振り替える際に他勘定振替高を使います。IT サービス業でも、開発部門の費用を製造原価として集計している会社が自社利用のツールを開発して資産計上する場合に、同じ処理が出てきます。
Q. 他勘定振替高と棚卸減耗損の違いは何ですか?
他勘定振替高は「販売以外の目的で意図的に使った分」を別の勘定へ振り替えるものです。棚卸減耗損は、帳簿上あるはずの在庫が実地棚卸で足りなかった「原因不明の減少」を損失として計上するものです。使い道が分かっているかどうかで区別します。
Q. 振替は月次で行いますか、決算時だけですか?
会計上は決算整理仕訳として期末にまとめて行うこともできますが、プロジェクト管理会計の観点では月次で行うことを勧めます。月次で案件別の原価を集計し、完成した分を毎月振り替えておけば、期末に一括で集計する手間がなく、月次の売上総利益も正しく読めます。
Q. ソフトウェアに振り替えた金額はその後どうなりますか?
無形固定資産のソフトウェアとして計上し、市場販売目的なら見込販売数量(または見込販売収益)に基づく方法(残存有効期間、原則 3 年以内の均等配分額を下回らないこと)、自社利用なら利用可能期間(原則 5 年以内)の定額法で償却します。製品マスター完成前の費用や研究段階の費用は資産にできず、研究開発費として費用処理します。線引きは本文末のリンク先で解説しています。
無料でLEEADを始める

30日間無料。営業とのやり取りなしで今日から使えます。

まずは資料で確認したい方はこちら(無料ダウンロード)

古谷 幸治

監修:古谷 幸治

上場企業CFO。不動産デベロッパー・建設業・CM映像制作業を経て、2002年にITパッケージシステム会社「エンプレックス」に参画し取締役CFOに就任。2016年、大手芸能プロダクションの経営企画を経て株式会社プロジェクト・イノベーションを設立。不動産建設業の会計知識を土台に、映像制作・ソフトウェア開発/SI・ITサービス業での経営管理経験から「プロジェクト管理会計」の手法を体系化。コンサルティング先は200社超。