採算とは?意味・使い方・計算方法|「採算が合う/合わない/取れる」の違いを例で解説

公開日 更新日 収支管理 Leead Magazine 編集部
採算とは?意味・使い方・計算方法|「採算が合う/合わない/取れる」の違いを例で解説

採算(さいさん)とは、事業や案件にかけた費用に見合うだけの収益が得られているか、つまり「割に合うかどうか」を表す言葉です。 会計上は「売上 − 費用」がプラスなら「採算が合う(取れる)」、マイナスなら「採算が合わない(採算割れ)」と判断します。

企業経営において「採算」は非常に重要な概念です。単に利益が出ているかどうかを示すだけでなく、経営の健全性や将来の成長可能性を評価する上で欠かせない指標です。

この記事では、採算の意味と使い方、計算方法、「採算性」「採算率」「採算ライン」との違い、そして「限界利益」や「損益分岐点」といった採算計算に欠かせない概念まで、例を使ってわかりやすく解説していきます。

採算の意味と読み方

「採算」は「さいさん」と読みます。「採」は「取る・集める」、「算」は「計算する」を意味し、もともとは「収支を計算して、引き合うかどうかを見る」という意味の言葉です。英語では profitability(採算性)や pay off(採算が取れる)にあたります。

日常でもビジネスでも「割に合うか」という意味で使われますが、経営の場面では次の 3 つの視点で使い分けられます。

視点問い例
事業・会社この事業は続ける価値があるか新規事業の採算性を検討する
案件・商品この案件(商品)は利益が出るか不採算案件を洗い出す
時間・人かけた時間に見合う利益が出ているか時間当たり採算を見る

「採算が合う」「採算が取れる」「採算を合わせる」の使い方

表現意味例文
採算が合う / 採算が取れる費用より収益が多く、利益が出ているこの価格なら採算が合う
採算が合わない / 採算割れ費用が収益を上回り、赤字になっている値引きしすぎて採算割れになった
採算を合わせる / 採算を取る赤字にならないように費用や価格を調整する外注費を見直して採算を合わせる
採算度外視利益を考えずに行う採算度外視でブランド構築に投資する
採算ベースに乗る赤字から脱して利益が出る状態になる3 年目でようやく採算ベースに乗った

採算の基本概念

採算とは、企業が商品やサービスを販売して得られる収入(売上)と、それを作り出すために必要な費用の関係を表す指標です。最も単純な形では、採算は「売上 − 費用」で表されます。この計算結果が正の値(プラス)であれば「採算が取れている」、つまり利益が出ていると言えます。

しかし、実際の企業経営では、この単純な計算だけでは十分ではありません。より詳細な分析と管理が必要となります。そこで重要になってくるのが、「変動費」と「固定費」の概念です。

変動費は生産量や販売量に応じて変動する費用で、原材料費や製造に直接関わる人件費などが含まれます。一方、固定費は生産量や販売量に関係なく一定して発生する費用で、家賃や設備の減価償却費などが該当します。

これらを考慮した採算の基本計算式は次のようになります。

採算 = 売上高 − 変動費 − 固定費

計算例:売上があるのに採算が合わない案件

採算は「売上の大きさ」ではなく「売上と費用の差」で決まります。受託型のビジネスを例に、同じ月の 3 案件を比べてみます。人件費は「投入時間 × 時間単価 5,000 円」で計算しています。

項目案件 A案件 B案件 C
売上3,000,000 円2,000,000 円1,500,000 円
人件費(320 / 180 / 360 時間)1,600,000 円900,000 円1,800,000 円
外注費400,000 円300,000 円0 円
経費100,000 円50,000 円50,000 円
利益(売上 − 費用)900,000 円750,000 円▲350,000 円
採算合う合う合わない

案件 C は売上が立っているのに、人件費だけで売上を超えており採算が合っていません。3 案件の合計は 130 万円の黒字なので、会社全体の数字だけを見ていると、この採算割れは見つかりません。

採算性・採算率・採算ラインの違い

「採算」から派生した言葉には、それぞれ少しずつ違う意味があります。

用語意味計算・目安
採算性費用を回収して利益が出る見込みの度合い粗利率、限界利益率、投資回収期間などで評価する
採算率費用に対して収益がどれだけあるかの比率収益 ÷ 費用 × 100(100% 超で採算が合う)。「利益率」と混同されやすい
採算ライン採算が合い始める売上の水準損益分岐点売上高と同じ
採算割れ採算ラインを下回り赤字になっている状態売上 < 費用
不採算採算が合わない、または低すぎる状態不採算事業・不採算案件

採算性とは

採算性とは、その事業や案件が「費用を回収して利益を出せる見込みがどれくらいあるか」を表す言葉です。「事業採算性が高い」「採算性が低い案件」のように使います。

採算性を評価する代表的な指標は次のとおりです。

  • 粗利率(売上総利益 ÷ 売上高):案件や商品の採算性を比べる最も基本的な指標
  • 限界利益率(限界利益 ÷ 売上高):売上が増えたときに利益がどれだけ伸びるか
  • 投資回収期間:投じた費用を何年(何か月)で回収できるか。新規事業や設備投資の採算性で使う
  • 時間当たり採算:(売上 − 外注費 − 経費)÷ 投入時間。人が主な費用のビジネスで使う

「採算性が低い」案件とは、粗利率が会社の目標(たとえば 30%)を大きく下回る、あるいは投資回収期間が長すぎる案件のことです。採算性が低くても、戦略的な理由(実績づくり、新規顧客の開拓)で受ける判断はありえますが、その場合は「どこまで許容するか」を事前に決めておく必要があります。

採算率とは

採算率は、費用に対して収益がどれだけあるかを百分率で表したものです。

採算率(%)= 収益 ÷ 費用 × 100

100% を超えていれば採算が合っており、100% を下回れば採算割れです。先ほどの案件 A は 300 万円 ÷ 210 万円 = 約 143%、案件 C は 150 万円 ÷ 185 万円 = 約 81% となります。

なお、「採算率」を利益率(利益 ÷ 売上)の意味で使っている資料もあります。社内で指標として使う場合は、どちらの定義かを最初に決めておくと混乱がありません。

採算ラインとは

採算ラインとは、それ以上の売上があれば採算が合う、という境目の売上高のことです。会計では「損益分岐点売上高」と呼びます。計算方法は次の章で解説します。

限界利益の重要性

ここで、新たに「限界利益」という概念を導入します。限界利益とは、売上高から変動費を引いた額のことです。つまり:

限界利益 = 売上高 − 変動費

限界利益は、固定費をカバーし、利益を生み出すために使える「余裕」を表しています。限界利益が大きいほど、企業は固定費をカバーしやすく、利益を出しやすい状態にあると言えます。

例えば、ある商品の販売価格が 1,000 円で、その商品の製造に必要な変動費が 600 円だとすると、限界利益は 400 円になります。この 400 円が、固定費をカバーし、最終的な利益を生み出すための「余裕」となるのです。

限界利益率(限界利益 ÷ 売上高)も重要な指標です。限界利益率が高いほど、売上が増加したときに利益が大きく伸びる可能性が高くなります。

損益分岐点の理解と活用

「損益分岐点」は、採算管理において非常に重要な概念です。損益分岐点とは、総収入と総費用が等しくなる点、つまり利益も損失も発生しない売上高のことを指します。これが「採算ライン」です。

損益分岐点は以下の式で計算できます:

損益分岐点売上高 = 固定費 ÷ (1 − 変動費率)

ここで、変動費率は「変動費 ÷ 売上高」で計算されます。

損益分岐点を知ることで、企業は最低限どれだけの売上が必要かを把握できます。例えば、月間固定費が 100 万円で、商品の変動費率が 60% だとすると:

損益分岐点売上高 = 1,000,000 ÷ (1 − 0.6) = 2,500,000 円

つまり、月間 250 万円の売上があれば損益が均衡し、それを超えると利益が出始めることがわかります。

この損益分岐点の知識は、事業計画の立案や価格設定、コスト管理などに大いに役立ちます。 例えば、固定費を削減したり、限界利益率の高い商品の販売に注力したりすることで、損益分岐点を下げ、より少ない売上高で利益を出せるようになります。新規事業での計算例は「新規事業型プロジェクト管理会計における「損益分岐点売上高」の計算方法」で解説しています。

採算が合わないときの改善方法

採算が合わない(採算割れ・不採算)と分かったとき、打ち手は「収益を増やす」か「費用を減らす」か「やめる」の 3 方向しかありません。

方向具体策向いている状況
収益を増やす値上げ、追加要望の有償化、スコープの見直し顧客にとっての価値が価格に反映されていない
費用を減らす工数の削減、外注先の見直し、間接費の配賦見直し作業のやり方に無駄がある
やめる撤退、更新時に契約終了、受注しない構造的に採算が合わず、戦略的な意味もない

案件の場合、最も効果が大きいのは見積の段階です。赤字の多くは受注時の工数見積が実態より少ないことで決まっており、進行中に努力で取り返せる幅は限られます。案件が採算割れするパターンと対処は「プロジェクトの収益性を向上させるためのガイド − 採算性の低いプロジェクトの回避と対処 −」と「「不採算案件の撲滅」を行う方法」で解説しています。

効果的な採算管理の実践

採算を一度計算して終わりにせず、継続的に見ていく活動が「採算管理」です。効果的に行うためには、以下のような取り組みが重要です:

  1. 正確なデータ収集と分析: 会計ソフトの導入や定期的な在庫確認により、正確な売上と費用のデータを収集します。人が主な費用のビジネスでは、案件ごとの投入時間の記録が欠かせません。

  2. 変動費と固定費の最適化: 原材料の仕入れ価格交渉や生産性向上により変動費を削減し、同時に固定費の見直しも行います。例えば、不要な設備の処分や業務プロセスの効率化などが考えられます。

  3. 商品・サービスの採算性評価: 各商品やサービスの限界利益を計算し、採算性の低いものは改善や廃止を検討します。一方で、限界利益率の高い商品・サービスの販売促進に注力することも効果的です。

  4. 価格戦略の最適化: 損益分岐点分析を基に、適切な価格設定を行います。ただし、競合他社の価格や市場の需要動向も考慮に入れる必要があります。

  5. シナリオ分析の実施: 売上高や費用が変動した場合の採算への影響を事前にシミュレーションします。これにより、市場環境の変化に迅速に対応できるようになります。

採算管理の目標・メリット・手法、部門別と案件別の違い、時間当たり採算の運用は「採算管理とは?成功に向けた基本とメリットの解説」で詳しく解説しています。

まとめ

採算とは、かけた費用に見合う収益が得られているか、つまり「割に合うか」のことです。本記事の要点は次の 5 つです。

  • 採算は「売上 − 費用」がプラスかどうかで判断する。売上の大きさでは判断しない
  • 「採算が合う/取れる」は利益が出ている状態、「採算を合わせる」は赤字にならないよう調整すること
  • 採算性は見込みの度合い、採算率は収益 ÷ 費用の比率、採算ラインは損益分岐点売上高
  • 変動費と固定費を分けると、限界利益と損益分岐点から「いくら売れば採算が合うか」が計算できる
  • 採算が合わないときの打ち手は、収益を増やす・費用を減らす・やめるの 3 つ。案件では見積の段階が最も効く

これらの概念を正しく理解し、日々の経営に活かすことで、より戦略的な意思決定が可能になります。まずは自社の案件や商品ごとに「売上 − 費用」を出し、採算が合っていないものが何件あるかを確かめるところから始めてください。

関連する用語(採算・原価・収益認識・工数)の定義は「プロジェクト会計 用語集」にまとめています。

よくある質問

Q. 採算とは、簡単に言うと何ですか?
かけた費用に見合うだけの収益があるか、つまり「割に合うかどうか」のことです。売上から費用を引いてプラスなら「採算が合う(取れる)」、マイナスなら「採算が合わない(採算割れ)」と言います。
Q. 採算と利益は同じ意味ですか?
近い言葉ですが同じではありません。利益は「売上 − 費用」の金額そのものです。採算は、その利益がプラスかどうか、費用に対して見合っているかという「評価」を指します。利益が出ていても、投じた資金や時間に対して少なすぎれば「採算が悪い」と言います。
Q. 「採算が合わない」とはどういう状態ですか?
その事業や案件にかけた費用(人件費・外注費・経費など)が、得られる収益を上回っている状態です。売上が立っていても、人件費を含めた総費用が売上を超えていれば採算は合っていません。
Q. 採算性と収益性の違いは何ですか?
採算性は「費用を回収して利益が出るか」という損益の観点、収益性は「投じた資本や売上に対してどれだけ利益を生むか」という効率の観点です。実務では、まず採算性(赤字にならないか)を確認し、次に収益性(他の案件と比べて効率が良いか)を比べます。
Q. 採算はどうやって計算しますか?
基本は「売上 − 費用」です。費用を変動費と固定費に分けると、「限界利益 = 売上 − 変動費」「損益分岐点売上高 = 固定費 ÷(1 − 変動費率)」で、採算が合い始める売上(採算ライン)まで計算できます。案件単位では、人件費を「投入時間 × 時間単価」で含めることが重要です。
無料でLEEADを始める

30日間無料。営業とのやり取りなしで今日から使えます。

まずは資料で確認したい方はこちら(無料ダウンロード)

塩塚 丁二郎

監修:塩塚 丁二郎

早稲田大学卒業後、野村総合研究所でSEとしてキャリアをスタート。2015年に独立し、IoTスタートアップ、音声アプリ開発を経て、PM支援・SI事業を軌道に乗せる。電子契約サービスCloudContractの実装、運用を手掛け、2020年からはプロジェクト会計・フォーキャストに特化したLEEADを運営。現在はDX・AI領域、カフェ店舗運営など、複数の事業を展開している。

株式会社ETVOX 塩塚 丁二郎